【性転換】Change!!【#鶴葉書】

朝起きたらあるものが無くて無いものがありました。


「あぁ、なんか……山伏全体的な感じだねぇ。」


某宇宙人狼の緊急招集よろしくDiscordに集まった家族は皆一様に『変化』していた。とんでもない寝起き顔なのを自覚しながら気合を入れてオンカメラにすれば、「男の子」になった自分が嫌でもPC画面に映し出される。けれどそれは残念ながら、いや、喜ぶべきか、私だけではない。
集まった面々を見て溜息を吐く男性、たわわな胸はそのまま筋肉になったのかと思うくらいの身体付きは山長である七百歳の熊、はは様だ。
眠そうに目を擦ってうつらうつらとしているイケメンは山伏の長女であった雪輪ねぇさまだし、ポチポチとこんな時でも画面を叩きながらこちらをちらりと伺う美男子は山伏の三女たる冬萌ちゃんに違いない。
いつもは忙しそうにしているのにと見れば顔面蒼白で仕事先になんて説明しようとおろおろしている美女は長男の灰鯉兄様だと思う、反対に案外けろっとしている美少女は次男の眼隴くんだ、多分そう。


「とりあえず、一旦配信とか動画とか、仕事も、一旦おやすみね、みんな。」
「はーい。」
「えっ。」
「えっ。」
「うぃー。」
「ラッキー。」
「はい、灰鯉と鶴葉は大人しくしててねぇ。」
「いや、鶴葉の動画と配信はともかく、俺、仕事はまだ分から……。」
「私配信か動画の撮影していないと体調崩すのですが!?」
「はいはーい、分かったから。2人ともお座り。」


こういう時、長女、否、永い時を生きている雪輪ねぇ様は強い。文句のひとつでもといきり立つ長男次女、今は長女次男を一発で黙らせてしまう。今は声も相まって迫力も凄みもある。めちゃめちゃいい声じゃん。


「でも現実問題、何とかしないと困りますよね、私たちはともかく、女体化の2人は。」
「女体化……そっか、これ女体化か。」
「眼隴くん、おっぱい揉まないの。女の子なんですから。」
「冬萌姉さんは気にならないの?」
「……………………いや、今は我慢できます。」
「冬萌氏、凄い間が。」


無いものがあると興味が湧くのは全生命体、致し方のないことであって。確かにちょっと気になってはいる、後学のため、今後の同人誌活動のためにも。


「とにかく、ママ上、あー、いや、パパ上?的にはどう考えてんの?」
「Twitter見てても特に変化は無いし、私たちだけになにかしら作用しているって考えるべきだね。だから……そう、間違いなく御山関係の『異』、としか考えられない。」
「なるほどね。」
「それと、もう一つ。在り方が全員変化しているということは、少なからずそれぞれの力にも影響があるはずなんだわ。そしてこの状況をもし『異なるもの』が意図的に作り出したとすれば、今かなり危ない状態にある。」
「……まさか、ママ上。」
「うん、結構……キツい、これ。」


はは様の言葉に全員の目の色が変わる。仕事、趣味などは最早頭から抜けていたに違いない。山長の不調は周囲の環境への負荷もありうる。見える変異よりも見えない変異の方を恐れるべきだというのは誰の言葉か。


「灰鯉。」
「母さんのところに。 」
「鶴葉。」
「はい、御山に向かいます。」
「冬萌。」
「鶴葉お姉ちゃんの傍で応援します。」
「眼隴。」
「母さんの様子を見てから、僕も鶴葉姉さんのところに。雪輪姉さんは?」
「私はママ上……のとこに行きたいけど、シロさんたちも心配だから。一通り見て回る。灰鯉、眼隴、頼んだよ。」


雪輪ねぇ様の声がけに兄弟たちは自分の役目を確認する。山伏には山長に何かあった時の動きがある。
灰鯉にぃ様は万物の根源たる水の力、悪しき力の変化に対する絶対的な抑止力だ。そして、眼隴くんは全てを包む陽の力、望まない変化を緩和する癒しの力だ。対して、私と冬萌ちゃんは真逆の力だ。冬萌ちゃんは氷の力で私は炎の力、いずれも悪しき力を拒絶し根絶する。
雪輪ねぇ様はその全てを統べることが出来る力、力を統べる力だ。
こうして私たちは自分のやるべき事をやろうと動きが始めた。が。


「じゃあ灰鯉兄さん、はは様の家で。」
「いや、待ってくれ、行くけど、行くんだけど。胸が。」


この日はたまたま、家族が皆別々の拠点にいた。服の貸し借りをするような心的猶予は残念ながら誰にもなかった。


「……僕はこのままでもいけるけど。」
「私も特に変わら……いや、胸がないとやっぱり安定感が!」
「はは、変わらないって言いかけましたね、鶴葉姉さん、かーわいい。」
「一番近いのは鶴葉の家、か……サイズ、入る?」
「厳しいと思う。」
「即答ですか!?」
「じゃあ、ママ上のところで合流。渡す。」
「……灰鯉にぃ様のブラ装着見たかったなぁ。」
「ね、雪輪ねぇ様か眼隴くん、スマホで撮っといてくださいね。」
「もうそんなこと言ってないで、二人は早く行く!」
「任されたー。」
「眼隴くんもふざけない。」


こうして性転換した山伏の攻防戦が始まった。





続…………くかな?

鶴葉の手控

Vtuberとして、山伏として。 日々忙しい鶴葉のてびかえ。 日記だったり、お話だったり したためていく場所です。

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