夢小説風の何かです。
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
ワンクッション。企画用に書いてみました。
声が良いと褒めていただけるので
2020年から朗読の企画をやってみようかと
思っています。
「星座の話をするとしよう。」
思わず首を傾げる俺の腕を抜け出して、鶴葉はベッドから飛び出す。もう寝ようかとしているタイミングで薄着のまま窓に近付くものだから、寒くはないかと心配になる。近くに落ちているストールを拾い上げてステップを踏むようにしながら窓に近付く背中にはどこか庇護欲的なものを感じるが、それを言うとひどく不機嫌になるので言わないでおく。
軽い音を立てて開かれたカーテンの奥には、明るい室内を映す暗い窓がある。そこでくるりとターンをして、鶴葉は少し大げさなお辞儀をする。
「マーリンの真似、ですよ。」
「あいつは王の話だろ。」
「似たようなものですよ、王も、星も。人には過ぎた輝きです。」
そう言う鶴葉の瞳はどこか曇って見えた。それもそうだ、山伏という存在になる前に彼女は一度人間に裏切られている。主語を大きくするつもりはないと困ったように笑うものの、その瞳が曇るさまは見ていてどこか痛々しい。今でこそ鶴婆などと言うものの、当時の彼女は齢十八の女学生だ。
どこか近付き難さを感じてベッドに座ることしかできない俺を見て、彼女の瞳が少しだけ晴れた。
「ふふ、ごめんなさい、ちょっと最近原稿でそういったテーマを書いていたので、つい。」
「……俺の心配を返せ、この性悪合法ロリ。」
「嫌ですよぉだ。」
「それで、星座の話って?」
「この間、アポロチョコレートを食べていた時のことです。」
「星座。」
「いいから聞いてください。それでね、アポロの箱のところにクイズが載っていたんです。」
「クイズ?」
「そう、クイズ、星座に関するものだったんですけど。」
「ふーん?」
「星座っていくつあると思います?」
「知らん。」
「脳って使わないと退化するって知っていますか?」
「知っている、が、前置きが、長い!」
「なぁんですかぁ!もうすぐそうやって結論に急ごうとする、良くないですよ、それ!」
いいからと促せばむぅと膨れていた頬がしぼみ、ふ、と空気が澄んだ。
「88の星座には、ひとつひとつ、物語があるそうです。」
部屋は未だ明るいままなのに、窓の外の景色が鮮明に映る。
「その一つ一つの物語、紐解いてみたいと思いませんか?」
ぱちん。
「大丈夫ですか?」
「っ……!」
「あらぁ、即席でも案外いけるものですね。」
「なに……を?」
「ちょっとした幻術です、炎でちょちょいと。」
「……それで?」
「そう、ちょっと俄然星座に興味が沸いてしまったのでお話しをしようかと思いまして。」
「寝物語に?」
「そうそう、それでいい資料を見つけたのでちょっと聞いていただいてもいいですか?」
「……分かった、聞くから。そんな恰好で、冷えたらどうするんだ。」
「あ、まぁた子ども扱い!許せないです!」
むくれる鶴葉をベッドに呼び戻せば、それなりに寒かったことは認めるのかすんなりと毛布にくるまった。
「それじゃあ失礼して。」
いそいそとベッドサイドに置いてあった本の中から一冊の本を手に取った。
「ちょっと気合を入れて読むので、ちゃんと聞いていてくださいね。」
そう言った鶴葉の瞳にきらりと小さな一等星が見えた。
雷鳥社さんの【星の辞典】という書籍があります。
声で朗読し、小説で神話を綴る。
こういった試みができればと思っています。
アポロの星座話がこんなところまで拡大するとは夢にも思いませんでした。
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