雑パラレルパロディ。
鶴葉さんの男体化Zくんがいます。
【Zたず】
「白の気持ち」
ムスッとした表情の鶴葉の前で腕を組むZ。似たような顔のまるで双子のような二人ではあるが、実は付き合っている。
「鶴葉さん、俺の言いたい事は分かりますね。」
「いいえ、分かりません。」
「おう、こっち見ろ、ロリババァ。」
「やかましいですよ、誰が貴方の顔なんて見ますか、顔面偏差値高いからって調子こいてるといい加減火傷跡でも残してやろうかという気に……。」
「分かった分かった、落ち着け、怒りたいのは俺もなんだから。」
「……そりゃ悪いとは思っていますが。」
そう言って鶴葉はそっと左腕を隠す。そこにはいつもの黒いインナーは無く、白い包帯が巻かれていた。温泉宿での手伝いの最中に怪我をした、そしてそれを隠しながら仕事を続け帰る最中に痛みだした。家に着くまでは我慢をしたものの、扉を閉めた瞬間にその瞳からはポロポロと涙がこぼれ、労いの言葉でも投げかけようと玄関に顔を出したZが度肝を抜かれた、という顛末である。
「……あのなぁ、別に俺怪我したことを怒ってるわけじゃないのは分かるよな?」
「知っています、怪我したことを報告せずに仕事を続け挙句の果てに帰って泣くという失態を犯したことに対して憤懣やるせない顔をなさっているんですよね。」
「言い方……合ってるけど、言い方。」
「…貴方の前じゃないと、だめなんです。」
細く震える声がそう、ひとつ、告げる。その言葉に暫し動きを止めたZは、行儀悪く机に肘をついて歪んだ顔を隠すように背けた。
「耳。」
「うるせぇ。」
「真っ赤ですよ。」
「言うなって言ってんの。」
ふふっ、小さな笑い声を零して鶴葉は立ち上がる。まだ痛みの残る左腕を伸ばしてとんとん、とその少し柔らかい質の髪を撫でる。
「いつもそばにいてください、あなたが居ないと、私はダメになってしまいますから。」
「お前のその手が右手だったら引っ掴んでベッド直行だった。」
「っ……け、けが人になんてことするんです、というか、なんかそんな気がしたからこっちの手を出したんです、ほんと、けだもの、えっち!」
「だからわぁきゃあ騒ぐなって!」
その後いつもより甲斐甲斐しく世話を焼くZに感謝の念より気持ち悪さが勝ったというのは、鶴葉の心の中にだけそっと留められた。その後彼女が無理をして怪我や病気を隠すことは無くなったらしい。
【たずZ】
「青の轟」
ガタガタと揺れる窓枠。ビタビタと叩きつけられる窓。ゴウゴウと揺れる建物。閃光、そして叩き付けるような轟音。その状況に先に寝を上げたのはZの方だった。
「え、いや冗談ですよね……?」
「お願いします鶴葉さんほんと後生なので。」
「……えー。」
いくら付き合っているとは言え、毎日同じ時間に寝る訳でもない。お互いに作業があったり、時にはその存在が疎ましい時すらある。例えば実況を撮る時など。だからこそ互いの作業部屋は分けてあった。
その日は爆発的な気圧の低下て天気が不安定だった。公言している通り、鶴葉は雷が嫌いだ。それはもちろんZも同じであった。鶴葉はヘッドフォンで外界の音をシャットアウトして、雷の光だけを見ながら作業をしていたのであった。
そんな時にZが鶴葉の部屋を訪ねてきた。聞かなくても分かるその様子とタイミングに呆れ果てる鶴葉にZは枕を握りしめながら頭を下げた。
「一緒に寝てください。」
「今日は作業が……。」
「後生なのでっ!」
「……はぁ、もう、仕方ないですね。」
作業は明日の朝にでも、と諦めた鶴葉はPCを閉じる。そして心底安心したような表情で2人で寝る用のベッドに潜り込むZの後を追う。
「……やけに今日は素直ですね。」
「いやお前も怖いかと思って。」
「はっ倒しますよ、こちとら雷収まるまでヘッドフォンで無音化していたのに。」
「……お前の声、落ち着くから。」
「そうですか……じゃあ、困った坊やにお話しながら寝かしつけてあげますよ。」
隣に体を滑り込ませて、鶴葉は自分より少し大きな体を抱きすくめるようにして優しく抱き寄せた。大人しくされるがままになる様子に本当に怖かったのだと改めて感じ、ゴロゴロとまた鳴りだした雷鳴に負けじとそっと耳元に唇を寄せた。
「むかーしむかし……1匹の鶴と1枚の葉がゆらりゆらり、と踊っていました。」
ひとつひとつ、言い聞かせるようにその声を耳に落としていけば荒かった呼吸も徐々に穏やかな寝息に変わる。
「なんだかんだ言って……もう1人の私なんですね、貴方も。」
「ん、ぅ……。」
「この世界……どれほどいられるか分かりませんが、私は……貴方に出会えて少なくとも幸せですよ。」
「……。」
「起きてるの、分かってますけどね。」
耳まで真っ赤に染めあげながら寝たふりを貫き通すZに小さく笑を零し、自分もそっと目を閉じた。
「Zくんは右でもいいけど、私はリバ寄りの左でしょう!」
「ぶっちゃけ俺どっちでもいいけど、こいつとCPする時はどう考えても俺が左だろ。」
「なにをぉ!?」
「やんのか?」
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