【CP】夢-おちゃ【#お茶の色】

#お茶の色

望んで飛び込んだ。そうあるべきだと思ったから飛び込んだ。でもそこは、光の一筋すら届かない暗く深い闇の中だった。

「おちゃさん。」

柔らかい声が背中を撫でる。大丈夫ですよ、なんて無責任なことを宣う声が今はただただ怖かった。
けれど、それでも、これがあいつじゃなくて良かったとも思った。こんな暗闇の中で藻掻く姿はきっと似合わない。
だから、ただ待っていた。ずっと、ずうっと、待っていた。闇の中で静かに息をしながら、柔らかな声から空気を吸い、ただただ光が差すのを待っていた。

「おい。」

二度三度。暗闇に慣れた瞳が光を取り入れるには時間が掛かる。ぱちぱちと瞬いた瞳が捉えたのは、零れ落ちる光だった。

「おそかったじゃん。」

やっと絞り出した言葉は、少しだけ期限を損ねてしまったのかもしれない。それよりも早く顔が見たい。重さを落としながら手を伸ばせば、軽い音が響いた。

「なんか……変わったな。」

見えた瞳が、怯えている。そう感じた。最初に飛び込んだ時の感覚。でも、大丈夫。

「いろおり、だいじょうぶだよ。」

久しぶりに出した声は小さく震えていた。どこまでもどこまでも、届くように発した声は、どこかに跳ね返って落ちていった。

「いろおり、なぁ。」

振り上げた拳が突き破る。ガラス状の、プラスチックのような、金属片が拳を責め立てる。それでもそこには、零れ落ちる光などなかった。破った殻が音もなく消えていく。溢れんばかりの光が、この暗い底を攫っていくようだ。

「ずうっと、まってたんだ。」
「バカ言うな、先に行ったくせに。」
「それは、ごめん。」
「……今のお前はなんかちょっと怖い。」
「だいじょうぶ、ほら、あのひともいるから。」

柔らかく笑えているだろうか。あの人が吸うべき空気を分け与えてくれたように、自分も分け与えられているだろうか。

「なぁ、いろおり。」
「……何。」
「て、つないでいい?」

あらゆるものが刺さって自分の血で濡れた手を差し出せば、そっとひとつずつ、その欠片を抜いていく。

「これなら、痛くない。」

はじめて、わらった。

「うん……痛く、ない。」

はじめて、ないた。


夢-おちゃ





雰囲気小説書くの久しぶりです。

Vtuberの活動は、思った以上に小さな欠片が刺さってくるもの。(ねっとり)

鶴葉の手控

Vtuberとして、山伏として。 日々忙しい鶴葉のてびかえ。 日記だったり、お話だったり したためていく場所です。

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