Twitterの企画。
#リプした人ほぼ全員夢小説にする
#誰そ彼夢葉書
小さい頃、近くの山に綺麗なお姉さんがいた。いつも見かける訳ではなく、何度かたまにふらっと視界の端に捉えるだけだった。ただ、その物憂げな表情と冷たさを湛える瞳が脳裏に焼き付いて離れなかった。
悴んだ指を温めながら、そんなことを思い出す。何年ぶりかの帰省だ。
暗雲立ちこめる時勢も少しは晴れる兆しを見せてきて期待感は高まる。とはいえ、こっちの冬はやっぱり寒い。駅から家までの道すがら、なにかに惹かれて立ち止まるそこは橋の上だった。
「あら。」
落ち着いた声、雪が降る夜にひとつ。
振り向けば涼しげな色の着物を身にまとい、涼やかな髪を下ろした女性が居た。
「あ……おねーさん。」
「君はいつぞやの少年?まぁ、随分大きくなってしまって。」
彼女はくすくすと笑う。脳裏に焼き付いたそれと何ら変わらない、文字通り何も変わらない立ち居振る舞いだったが、不思議と嫌悪感は感じない。何故かそれを受け入れている。
「俺を、覚えているんですか?」
「御山に近いヒトは基本的に。里帰りですか?」
「えぇ、まぁ、はい。」
「良かったですね、今は満足に帰れる人も少ないでしょうに。」
声を聞く度に言いようもない感情がふつふつと湧いてくる。冬の夜、橋の上。寒さすら忘れて立ち止まる。
でもなんだか首元が寒そうで思わず言葉が吐いて出た。
「寒く、ないですか?」
「そういうのではないって、忘れちゃったんですか?」
「……ですよね。」
ヒトじゃない。そのことを明確に自覚したのは今だったのかもしれない。もっと前から分かっているはずのことを、さながら今分かったかのようにしている。
都会から逃げるようにしてこの寒い地に逃げ帰った自分を認めるような心地だ。
「しばらくこっちに?」
「……もう、ずっとここにいても、いいかなって。」
「それは素敵ですね、私とも会ってくれますか?」
「はは……えぇ、はい。」
「嘘つき。」
冷たい一言。笑っているのに、その温度感は随分と低い。
「……手厳しいこと、言いますね。」
「逃げるだなんてらしくない。」
「まぁ、そう見えますよね。」
「だったら、私を見ないふりしないでくださいよ。」
弾かれたように顔を上げると、感情と温度がそこにはあった。何もヒトじゃないから無いという訳ではない。その人は全て持っている。
「ばか……。」
触れられぬまま、立ち去る背中。追いかけようと手を伸ばして、ふわりと風がマフラーを奪う。あ、と手を伸ばしてももう遅く、それは橋の下、川の中へと沈む。まるで昔聞いた悲しい物語のようだ。
「贄とするため、ひとりの雪女が冷たい川へと入っていった。」
足が動く。手を掴む。引き寄せる。
「っ、え……?」
「あ、あの……お茶、くらい、だせます……温かい、お茶なら……!」
「……ふっ、ふふ、なんですか、それ。」
思い出に手を伸ばす。もう二度と離さない、と。
冬、橋の上。
*
夢小説あるある→ちゃんとキャラクターの背景が垣間見える
ふゆめちゃーーーん!!!寒い日は一緒におこたで日本茶飲もーーーー!!!
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