CC鶴葉【パロディ】

カードキャプターさくらのパロディ。

「あびゃあ……体育ですかぁ……。」

ここは山伏中学。お昼休みの終わりがけに、1人の女子生徒が体操着を持ったまま恨み言を呟いている。女子生徒……鶴葉は情けなくぺたりと体を机に付けて、一向に着替えようとしない。その姿に苦笑をしながらも、姉である雪輪はほらほらと着替えを促す。

「私は、妹氏が頑張って運動しているところ、見たいですけど?」
「もう、雪輪ねぇ様ってばそう言えば私が動くと思っているでしょ、動きますけど。」

姉の言葉に簡単に乗せられた鶴葉はいそいそと着替えを始める。授業開始の10分前を告げる鐘の音を聞くか聞かないかのタイミングで着替え終えた鶴葉は胸で揺れる新たな力を改めて見つめた。

「妹氏?」
「……ねぇ様、これ、一体なんなんでしょうね。」
「新しいカードもあるしねぇ。」
「っ、ちょっとはは様!?」

物憂げな雰囲気を壊すかのようなのんびりとした声に鶴葉も雪輪も一瞬身構えるものの、そこに現れたのは可愛らしいクマのぬいぐるみのどーるだった。2人の母親代わりの存在とも言えるどーるに雪輪は目を瞬かせ、鶴葉はぐいぐいとその体を押し込もうと躍起になっていた。

「いやぁ、美味かった、やっぱ鶴葉のお弁当は最高だね!」
「が、学校では大人しくしてって言ったでしょ!」
「だってつまんないんだもん、ねぇ、雪輪、おはやう。」
「ママ上、妹氏のカバンに潜り込むのこれで何度目ー?」
「んー、今週で3回目ー。」
「4回目ですよー!記憶どこに落としてきたんですかー!」
「別になんの訳もなく出てきた訳じゃないのよ、ほら、カードの気配。」

そう言って鶴葉の手から抜け出したどーるはゆったりと外を指す。誘われるがまま雪輪と鶴葉の視界は窓の外へと向けられる。するとそこには、夏の青空を隠すように黒い雲が張り出してきていた。

「えっ、今日雨降るって言ってましたっけ、傘なんて持ってきて……っ」
「妹氏、危ない!」

ぽやぽやと的外れなことを口走る鶴葉の体を目掛けて、窓を割って、二人の隠れ家である空き教室に何かが飛び込んできた。
いち早く気付いた雪輪がその体を床に抑え込む。

「鶴葉、雪輪、大丈夫!?」
ふわりと浮いているどーるが床に倒れ伏す二人のもとに近寄ると、数ミリ横に大きな氷の塊が落ちていた。床を抉り取らんばかりの勢いで飛んできていたのは、雹だった。

「雪輪ねぇ様……ありがとう、ございます。」
「ううん、鶴葉が無事なら。」

鶴葉の頭の後ろに回していた左手で、そっとその頭を撫でる雪輪に鶴葉の頬が熱を持つ。

「それより、鶴葉、カード。」
「うん、何か分かったら、連絡ください。とりあえず、行ってきます。レリーズ!」

未だに雹は降り続き、それを躱しながら鶴葉は一枚のカードを取り出す。

「ねぇ様とはは様は、安全な所へ!私が異変を突き止めます!フライト!」

運よくジャージに着替え終えていた自分に感謝しつつ、鶴葉の背中に透明なリボンが現れる。それを確認して彼女は雹が突き破った窓を開け放ち、校舎の外へとその体を投げ出した。ふわりとリボンによって浮いた体で屋上よりも高く飛び上がると、その黒い雲の異質さを確認する。

「な、んですか、これは……学校の、上だけ……?」

黒い雲は鶴葉のいる山伏中学の上空を覆うだけで、その周りの街は晴天の青空が見えた。内心慌てる鶴葉だったが、それでも容赦なく雹は襲い掛かった。フライトの能力でなんとか交わし続けるものの、あまりにも量が多く直撃を免れる程度にしかならない。

「っ、あ……い、った……!」

学校指定のジャージは短く、露わになっている膝やふくらはぎをかすめるたびに、鶴葉は声にならない悲鳴を上げる。容赦なく降りつける雹を、右に体を回転させてよけ、さらに直下に体を落として屋上の給水タンクを蹴って、再び上空へ、そんな移動を繰り返し、とうとう呼吸もままならなくなっていた。

「はぁ、は、ぁっ……、まずいですね、どうすれ、ば……っ、リフレクト!」

激しい運動に限界を感じ空中で止まってしまった鶴葉の体を、これ見よがしに雹は襲い来る。しかし鶴葉は取り出した一枚のカード”反射”を使って雹を全てはじき返した。しかし弾いた雹はあらぬ方向へと飛んでしまい、いくつかが校舎、そして校庭のプレハブなどに直撃させてしまった。

「っ、反射もダメ、逃げてもダメ!燃やせる系のカードはないし、電気で撃ち落とすなんてこともできないし……ひゃあっ、くっ、一体どうすれば……!」

雹を避けながら今まで集めたカードを思い返すものの、雹に対して有効になるような能力を持つカードはなく、天候に対してうまく作用するような強大な力を持つものも未だ鶴葉は見ていなかった。しかしこの異変を収めることができるのは、自分しかいない。そう思って再び反射のカードを強く握りしめたその時だった。

「火神招来!」

鶴葉めがけて飛んできていた雹が、明るい剣戟によって見る見るうちに溶かされていった。

「鶴葉姉さん!」
「っ、眼隴くん!」

屋上から放ったであろうその剣戟を、鶴葉はよく知っていた。彼女の弟である、眼隴のものだった。

「僕が動きを止めます、姉さんはカードを!」
「分かった……!」
「フライトで、飛んでくれたら、それを追います!」
「はい!」

弟の眼隴は今までの2種類のカードと違い、どーるや鶴葉、そして雪輪の内に住む存在のようにカードを感知することは出来ない。それを知っているからこそ、今回の"新たなカード"の収集には巻き込まないようにと内密にしてしたつもりだった。
それが何故、とちらりと屋上を伺った鶴葉の目に映ったのはビデオカメラを構えた雪輪だった。

「ほら、鶴葉、がんばれ!」
「はは様……眼隴くんは巻き込まないって……。」
「仲間はずれはさ、可哀想じゃん、やっぱ。」

頭に小型のカメラを付けているどーるがやんわりと鶴葉を諭す。その間も雹を上手くひきつけながら飛ぶ彼女に続くどーるは、愛する我が子達を見つめていた。

「さ、鶴葉、あとは任せたよ。」
「鶴葉姉さん!」
「妹氏!」
「……うん、行きます!」

鶴葉は暗雲立ち込める雲を目指し、その杖を掲げる。

「主なき者よ 夢の杖のもと我の力となれ、セキュア!」

カッと辺りに強い光が溢れ、鶴葉の視線の先、学校の上空に立ち込める黒い雲は白い結晶へと姿を変えていく。そして瞬く間に青空が戻り、結晶が音もなく割れたその時には、もう鶴葉の手に透明なカードが握られていた。平和になった学校の様子をしっかりと見届けた後に、鶴葉はフライトの能力で屋上で待っていた雪輪と眼隴の前に降り立つ。 

「姉さん、あの……。」
「眼隴くん、ありがとう。とっても助かりました。」
「……どうして、僕にだけ黙っていたんですか?」
「ちゃんと、ちゃんと話します。ね、雪輪ねぇ様。」
「もう隠し事できないって妹氏限界そうだったし。」
「そういうわけじゃ……というか、今回連れてきたのは雪輪ねぇ様とはは様でしょ!」
「僕じゃ、力不足なんですか!?」

雪輪とじゃれ合う様子を見せる鶴葉に、眼隴はその肩を掴みかかった。驚く雪輪に対して鶴葉は不思議と落ち着いていた。

「ううん、違いますよ。巻き込みたくないという、姉心、的なやつです。もう、過保護なのは誰譲りでしょうね。」
「ひゅうー……。」
「ママ上、吹けてないし。」
「姉さん……。」
「やっぱり私一人じゃできないことも多いし、眼隴くんの力を借りないとできないことも沢山あることが分かりました。だからね、眼隴くん。」

差し出した透明なカードには氷雹(ヘイル)と書かれていた。大小様々な氷の粒が描かれたそのカードを眼隴に握らせて、鶴葉はにっこりと笑った。

「これから、たっぷり付き合ってもらいますからね。」



カードキャプター鶴葉




鶴葉→さくらちゃん
雪輪ねぇ様→知世ちゃん&雪兎さん
眼隴くん→小狼くん
はは様→ケロちゃん
楽しかったー!

鶴葉の手控

Vtuberとして、山伏として。 日々忙しい鶴葉のてびかえ。 日記だったり、お話だったり したためていく場所です。

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