あつ森実況のSSです。
「たずはー!」
ぱたぱたと駆けてくるその足音に加えて、自分の名を呼ばれれば振り返る。この島においては自分が思っている以上に名前を呼んでくれることが多い。何かと隠匿体質の情報化社会の中でなかなかどうして、名前を呼ばれるのは少しだけ気恥ずかしい。
「わふ兄……えっと、チャンプさん、こんばんは。」
「こんばんはだぞ!いやぁ、やっと見つけたぜ!」
「おや、私をお探しでしたか?すみません……今日はあれこれバタバタしておりまして。」
「あぁ、いいのいいの、オイラがついさっきお前に用事を思い出したところだったんだ!」
「私に、ですか。何か素敵なレシピでも思いつきました?」
「違う違う、ほら、お前、これ欲しいって言ってた気がして、これ!」
そう言ってわふ兄が差し出してきたのは綺麗なお花の髪飾りだった。
「わぁ、素敵。でも……私そんなこと言いましたっけ?」
「あれ?言ってなかったか?」
「うーん、でも……そうですね、実際髪留めが無くなって困っていたんですよ。」
「ほんとか!?やっぱりな!前キャンベラもたずはの髪がどうのこうの言ってたぞ!」
「キャロ姉さんが……後でお礼を言わないと。それよりも、本当にこれ私が頂いていいんですか?」
見れば見るほど確かに私の好きな桃色の花で作られていて、今の袴にもピッタリ合いそうだ。しかし私と誰か別の女の子を勘違いしているのではないかと少しだけ気になった。特にこういうのは、パンダのピアさんは好き好んでいそうだし、きっとシカのブローニーさんあたりも似合いそう、それにきっとエレノアさんだって、あのオシャレな耳のそばに付けてあげればきっと。そう思って悶々と考えていると、目の前のわふ兄がニコッと笑った。
「その髪飾りを見た時に、お前の顔が1番に浮かんだんだ!だからきっとこれはたずはが探していたもんだったと思ったんだ!」
「……そうでしたか。」
「ん?どうした?夜なのに顔真っ赤だぞ?筋トレでもしてたのか?」
「いえ……この髪飾り、有難く使わせていただきます!失礼します!」
「おぉ、おぉー!たずはー!そんな走って、こけんなよー!」
顔が熱い。不覚にもドキッとさせられてしまって、しかも逃げるように走って家に駆け込んでしまった。
あんなこと言うキャラだったか?とかぐるぐる回る頭を抑えて、鏡の前に立つ。緊張しながら、いつもはリボンがある場所にそっとその髪飾りを通す。不思議とそれは収まりが良くて、それもなんだか気恥しい。
「でも……とっても綺麗。」
明日の朝、もう一度わふ兄にお礼を言いに行こう。そして島のみんなに自慢をしに行こう。
「あ、でも明日フータさんやまめつぶちゃんたち居ないんだった……。」
はでなかみかざり
じわじわとわふ兄が好きになっています。
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