※雰囲気で読んでください
※お誕生日はめでたいです
お誕生日おめでとう、という言葉を聞く度に思う。
私は生きていていいのだろうか、と。
今日という日は祝ってくる皆さんに並々ならぬ感謝の念を抱き、その裏で、一人生き残ってしまったことが身に沁みる日でもある。
まずはこの場を借りて、お礼を。
私と出会ってくれて、私を祝福してくれて、私を好きでいてくれる皆さんに感謝を。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
半ば巻き込む形でこちらに手を伸ばしてくれた方々には、願いを。
どうか在り方が変わっても、共に在れればと願うばかりです。
そして、私を見つけて手を取ってくださったはは様に尊敬を。
雪輪ねぇ様、灰鯉にぃ様、冬萌ちゃん、眼隴くんにも同じくらいの心を込めて。
それと同じくらいの強さで、私は私の生まれた日を呪うのです。
私が居なければ、家族の誰かが助かったかもしれない。
私が蔵に行かなければ、母は生きていたかもしれない。
とんだタラレバだと笑いますか?えぇ、酷い可能性だと思います。
こんなに愛されている私が、私自身を否定するだなんて。
そこまで分かっていて何故なのでしょうか。
何故、私は、私を許せない?
何故、この日を笑顔で迎えられない。
私は、わたしは。
『誰にも許されない傷を抱えていくのがあなたなんだよ』
「明日死ぬかもと常に死を片隅に置く貴方に言われたくありません」
『ごもっとも。正論ぶちかますの、楽しい?』
「これは正論ではありません」
『じゃあ何なんです?』
「本質です。私と貴方の」
『嫌なこと言うね、お嬢様』
「それほどでも」
私たちは、お互いのことが少し嫌いなのかもしれない。
「誕生日、おめでとうございます」
『えぇえぇ、そちらも生誕記念日おめでとう』
それでもあの日、互いに手を取った。
『わたしが背負う、手を出して』
「……ばかなひと」
私は貴方に罪悪を、わたしはあなたに祝福を。
「酷い夢を見ました……」
「うわ、すごい声。大丈夫?」
「なんとか……」
起きてきた鶴葉の声を聞いた灰鯉は顔をしかめる。血の繋がりのないとはいえ、彼自身と近い出生の彼女のことはそれなりに心を配っているつもりだ。妹、そのポジションも今となっては二人に増え、姉に加えて弟までいる彼にとって、自分のひとつ後の存在はそれなりに可愛がっていた。
「誕生日に悪夢だなんて、最低だね。」
「いやぁ、もうほんと堪らないですね、体痛いし」
「昨日は筋トレでも?」
「普通にゲームのやりすぎです」
「はい、罰」
「おぉん……」
最近新しいゲームが出たんだもん、なんてきゅるんと目を瞬かせる少女然とした齢七十を超えた人外に灰鯉が胸を躍らせることは無い。そうしている間にも続々と家族が集まってくる。
「あ、たずは、おはやう~お誕生日、おめでと~」
「わぁい、ここにも罰与える必要のあるはは様が居るぞー!昨日の作業時間は?」
「うぇ……」
「妹氏、お誕生日か。おめでとー。あとそこの熊はじっくり話を聞くからね」
「ひん」
「お姉ちゃんお姉ちゃん、お誕生日おめでとうございます!今年も色々遊んでください!」
「はいはい、冬萌ちゃんは今年も可愛いね、デビュー3周年おめでとうね」
「きゃー!お姉ちゃん覚えててくれたんですか!?」
「あったりめーよ!」
「夜勤明けでなんも買ってこれなかった……鶴葉姉さん、お誕生日おめでとう」
「夜勤戦士……今度一緒に戦場駆け抜けましょうね……」
「朝ごはん、作ったから運んでくれる?」
「さっすが灰鯉にぃ様。花粉対策のヨーグルトですね」
「あぁ、鶴葉」
「ん?」
「誕生日、おめでとう。」
「へへ、ありがとうございます」
祝福は、未だ終わらない。 罪悪は、誰かの元へ。
まだ燃える仕事があるんですか!?もう燃えカスでは!?ってなっている鶴葉さん。
この度皆さんと迎える四度目の誕生日です、おめでとうございます。
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