V.Gray-man(版権入り込み)

WJD灰夢小説もどきの何か
Vtuberが世界に入り込んでいる
とある配信の副産物
やりたいだけ

「ただいま戻りました!」
「……。」
「ちょっと神田ってばー、挨拶挨拶。」
「チッ……。」

露骨に舌打ちをする神田に追いかける玲、そんな二人を常駐する職員達は微笑ましく見ていた。
ここは黒の教団、ヴァチカンの命により作られた直属の対AKUMA軍事機関である。人々は文字通り命を懸けてAKUMA根絶、そして妥当千年伯爵に尽力している。

「おかえり、玲、神田。」
「あ、どーるさん!お疲れ様です!どーるさんも今帰還ですか?」
「ん、そんなとこよ。ちょっと野暮用でね、ヘブラスカんとこ行ってた。」

玲と神田の帰還を出迎えたのはどーる、この黒の教団きっての長寿職員であり、エクソシストだ。彼女が出てきたのはへブラスカの間とも呼ばれる最重要施設であり、そこに出入りする職員は多くない。

「あぁ、仲良いですよね、お二人。……お二人って言っていいのか、あれですけど。」
「はっはっはっ、あのヘブラスカ見て人とカウントできる玲ちゃんは今後大きくなるねぇ。」
「どーるさんくらい大きくなってみせますねー!」
「その歳じゃもう無理だろ。」
「もうユウってばそういうところだけはっきり口にするの良くないよ!」
「チッ……るせぇ。」
「君らはほんとに仲が良いねぇ。」

常に死と隣合わせの教団において、彼らのような賑やかさはともすれば騒がしいと取られることもある。しかしそれを優しく見守ることが出来るのはどーる含めた、より在籍歴の長い人達である。
今回もまぁまぁと玲の頭を撫で、神田にも手を伸ばす。

「おや。」

いつもなら手を振り払われる、ないしは抜刀される覚悟をしていたどーるはその手に痛みが走らないことに少しだけ目を見開いた。しかし撫でさせてくれる訳もなく、素早い身のこなしで自室へと歩き出していた。

「……神田、めずらしいですね。」
「玲ちゃん、神田のいないところでは神田って呼ぶのね。」
「まぁ、今はユウって呼ぶ必要は無いかなって。」

にっこりと笑う玲にどーるはふっと息をつく。それを見ていた彼女はどこか玲の不安定さを見抜いていた。不安を感じるまでの安定感は、おおよそ、その歳では身につけられないものだと思っていた。元が人間でないどーるでさえ、それは分かっていた。
それは何時しかこの戦争が終わった時にでも、ともう一度彼女の頭を撫でた。
その数時間後。ユウと玲が開いた扉を開いて戻ってきたのは、血塗れの赫犬だった。
ちょうど任務に出ていた彼と連絡が取れなくなっていたため、たまたま本部にいた元帥の一人、クロス元帥への出動要請が出ていたところだった。
高い酒に釣られて本部をあとにしようとしていたクロスは赫犬をしかと認めた。

「赫犬さん!」

一斉に駆け寄る職員たちを、彼は無言で受け入れる。そしてその目はしかと1人を捉えた。

「クロス……元帥……。」
「なんだ、お前、その体たらくは。」

傷だらけの体を労り運ぼうとしていた科学班の一人を押し退け、赫犬はクロスに向かって一直線にその体をぶつけた。そして左の掌がクロスの右頬を確実に捉えた。

「はぁっ、はぁ……貴方が、っ、貴方が……居なければ……っ!」
「……なんだ、ノアの1人にでも頭弄られたか?」
「っ、……!」
「随分弱くなったな、赫犬。」
「や、めろっ……!」
「てめェの覚悟はそんなものか。」
「喧し……っ、ぃ……!」

激情に駆られて振り上げた拳がクロスの体に吸い込まれることは無かった。力なく落ちる手は赤く染まり、握り締められた指の間から赤い血が滴り落ちる。膝から崩れ落ちる赫犬の体を支えたのは、先程から表情を少しも変えないクロスだった。

「鶴葉を呼べ。」
「はっ……?」
「鶴葉だ、どうせそこらで呑んだくれてるだろ。あぁ、それから……玲もか?あいつのがいいかもしれない。」
「呼びましたか?」
「なんだ、見てたのか。」

騒然とする広間の温度が数度下がった。コートを片手に持ち、にこにこと笑う鶴葉の登場にクロスはその口をひん曲げた。

「いいえ、大切な仲間の帰りが遅いと思いましたので。」
「単独で行くってか?」
「貴方が行くより、早いかと。」
「ほう?」
「寄り道迷子のクロス元帥じゃ、辿り着けませんって。」

声を抑えて笑う鶴葉に気味の悪いものを見るかのような視線を投げるクロス。奇妙な空間に響いたのは、クロスが赫犬を投げた音だった。そして奥からはコートを半分着ながら玲が走ってきた。

「ま、待ってください、鶴葉姉さん〜!」
「急に呼び立ててごめんなさいね、玲ちゃん。」
「いえ、例のノアですか?」
「分からない、でも貴方が適任だとこの元帥も言っていたので。」
「って、うわ、クロス元帥!?」
「さぁ、行きますよ。」

担架に乗せられ意識を失っている赫犬の肩にそっと触れ、鶴葉はコートを羽織り大きな扉を一瞥する。

「困りますねぇ……仲間を傷付けられたら本気を出さざるを得ないんですよ。」
「え、姉さん、何か?」
「いいえ、今日は月が綺麗ですから本気の玲ちゃんが見られるんだなぁと思って楽しみです。」
「きゃー!姉さんから期待かけられちゃった、頑張っちゃいますよー!」


*


ぽかりと浮かぶ月を木の上から眺める少女がいた。

「……あぁ、来たね。」

ピエロを思わせるような楽しげな格好に、楽しげな声。人の良さそうな笑顔に声、何一つとして人から嫌われるようなものを持たない少女の足元に二つの影が現れた。

「あんたですね、赫犬さんをボコボコにしたってやつは。」
「思った通り、ノアでしたね。」
「銃のお姉さんは久しぶり、んー、でも……そっちの鞭のお姉さんは会ったことないね、初めましてだ。」
「……玲ちゃん。」
「はい、分かっています。」
「んー?あれー?ふふふ、なーんだ、この子ヤバい子だー。」

ともすれば、歪にも見えるその笑顔に鶴葉も玲も一瞬足元を掬われるような心地になる。

「二人で倒しに来たのー?ふふ、愚か愚かー!私はそんなんじゃ……。」
倒せないよ、その言葉は二人の脳内で強く響いた。


to be continued ... ?


配信元↓



鶴葉の手控

Vtuberとして、山伏として。 日々忙しい鶴葉のてびかえ。 日記だったり、お話だったり したためていく場所です。

0コメント

  • 1000 / 1000